【予想】第86回アカデミー賞各部門予想6:作品賞

全部門リストのほうではすでにちらっと予想を書いていましたが、
サクッとまとめますと、この部門は非常に予想がしづらい部門なんです。

何故なら、3年前から作品賞候補が5〜10本となってしまったために、
作品と同時に何本来るかまで目処に入れなければいけなくなったからです。

とりあえず、前哨戦の流れからして、


『それでも夜は明ける』

『ゼロ・グラビティ』

『アメリカン・ハッスル』

『Her』

『Inside Llewyn Davis』

の5作品は堅実に候補入りを果たすはず。

となると、残りは0〜5本。
他の部門の候補等を考えてみると、演技部門、監督賞、脚本or脚色賞に必ず挙がっている作品から来るわけです。(第84回『戦火の馬』を除く)
となると、ある程度は絞られてはきますが、それでも20本以上の可能性が出てくるわけです。

まず絞り込みを図るなら、配給会社でのプッシュの仕方でしょうか。
上記5作品中、『ゼロ・グラビティ』『Her』の2作品はワーナーブラザーズ。同社は昨年の『アルゴ』の実績もある大手会社だけに、今年2作品入ってもおかしくはない。


基本的に毎年重要になる、ハーヴェイ・ワインスタインの動向に注目してみたいのですが、
『大統領の執事の涙』
『フルートベール駅で』
『8月の家族たち』
『あなたを抱きしめる日まで』
の4作品を今年のオスカーレースに乗っけてきた彼。

下馬評では最有力視されていた『大統領の執事の涙』が、前哨戦でことごとく相手にされず、助演女優賞で注目されていたオプラ・ウィンフリーですらノミネートが危うくなった今、直前での拡大公開も水の泡。おそらく候補入りは厳しいかと。

『フルートベール駅で』は各批評家賞の新人部門で大プッシュされています。脚本賞や監督賞はどうだろうか?可能性があるならオクタヴィア・スペンサーの助演女優賞ではあるが、その助演女優賞には、同じワインスタインの『8月の家族たち』のジュリア・ロバーツがほぼ当確状態。

となると、メリル・ストリープの主演女優賞や、脚色賞でも注目される『8月の家族たち』が作品賞に来ることも充分可能性があるということです。
同様に、主演女優賞と脚色賞に挙がる可能性の高い『あなたを抱きしめる日まで』も視野に入れるとして、残り3枠。



大手会社パラマウントはアレクサンダー・ペインの『ネブラスカ』とマーティン・スコセッシの『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の2作品を用意している。


毎年必ずのように入ってくるパラマウント作品。同年で2作入ってきたのは

・10枠固定で作品の層が薄かった第83回(『ザ・ファイター』『トゥルーグリット』)
・2作とも作品賞受賞最有力と言われた第80回(『ノーカントリー』『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』)。
遡れば『ゴッドファーザーPART3』がある種功労賞的にノミネートされた第63回(『ゴースト〜ニューヨークの幻』)や、第54回では5作中3作がパラマウントの映画だったこともあります。

では今年の2作品はどうか。
とくに問題なのは『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の扱いだ。ぎりぎり完成にこぎ着けて賞レースに滑り込ませながら、健闘を見せている本作。大量候補も噂されてはいるが、アカデミー賞でスコセッシほど信用できないのは頭が古いせいだろうか。確かに近年は『ヒューゴの不思議な発明』での最多ノミネートや『ディパーテッド』の作品賞もあったが、有力視された『アビエイター』の惨敗や、史上初めて10部門以上候補に挙がり無冠に終わった『ギャング・オブ・ニューヨーク』の例もある。

一方でアレクサンダー・ペインは出世作『ハイスクール白書/優等生ギャルに気をつけろ』から『アバウト・シュミット』『サイドウェイ』『ファミリーツリー』と、毎回脚本賞候補に入り、近2作は作品賞と監督賞まで候補入りするほどの腕である。

ちなみに両作とも脚本賞(『ウルフ〜』は脚色賞)の候補入りはかなり有力ではあるが、演技部門では『ネブラスカ』は問題ないが(ジューン・スキッブの助演女優賞が最有力視されている)、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』に演技部門の候補入りがかかるかに疑問が残る。
作品賞に入るなら『ネブラスカ』が優先だろう。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』は二の次になる可能性も充分だ。


一方で、下馬評が高いながら、前哨戦でまったく目立っていないトム・ハンクス出演の2本が難しいところ。
『キャプテン・フィリップス』は監督賞候補の光が消えていないのに加え、技術部門での候補の可能性も残る。
『ウォルト・ディズニーの約束』は主演女優賞候補こそ確実だが、残りは美術系部門と作曲賞への期待が何とか繋がっている状態である。
問題はトム・ハンクス自身が候補に挙がるのかどうか。挙がらなければ作品をいくら持ち上げても意味はないだろう。


気になるのは、外国語作品が今年はどこまで粘るか。
外国語映画賞にエントリーされなかったフランスの『アデル、ブルーは熱い色』はNC17指定が引っかかるところ。ただし、現行ルールに則れば、熱狂的なファンが票を投じてくる可能性も充分。
また、外国語映画賞一次選考で落選してしまったイランの『ある過去の行方』も気になるが、こちらは脚本賞での候補入りも期待されいる以上、可能性は充分にある。
ただし、どちらにせよ、外国語映画がノミネートされるためには外国語映画賞との両部門候補(『Z』『グリーン・デスティニー』『愛アムール』)や、大手配給会社のプッシュ(『イル・ポスティーノ』)、もしくは映画史的に重要な作家か否か(『大いなる幻影』『叫びとささやき』)であり、アブデラティフ・ケシシュもアスガー・ファルハディも現代では重要な作家ではあるが、ルノワールやベルイマンと比べるとかなり分が悪い。
サンダンス・セレクツの『アデル、ブルーは熱い色』、ソニーピクチャーズクラシックの『ある過去の行方』なら後者のほうが会社パワーはあるのだけれども……



(LOCK)

◎『ゼロ・グラビティ』
◯『アメリカン・ハッスル』
▲『それでも夜は明ける』
△『Her』
△『Inside Llewyn Davis』
『ネブラスカ ふたりの心をつなぐ旅』
『8月の家族たち』

(POSSIBLE)
1.『あなたを抱きしめる日まで』
2.『キャプテン・フィリップス』
3.『ウルフ・オブ・ウォールストリート』
4.『ウォルト・ディズニーの約束』
5.『アデル、ブルーは熱い色』






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