【前哨戦】アメリカ製作者組合賞発表!からの作品賞考察

最重要の前哨戦ともいえる、アメリカ製作者組合のノミネートが発表されました。

近年の作品賞とのマッチングが非常に高く、ある意味では作品賞を占う上では最も重要な前哨戦と言うか、ほぼ直結すると言っても過言ではないでしょう。



まず、候補が10枠になった近4年のアメリカ製作者組合賞の候補入り作品と、アカデミー賞作品賞のノミネートを比べてみましょう。

<2009年>
『アバター』
『第9地区』
『17歳の肖像』
『ハート・ロッカー』
『イングロリアス・バスターズ』
『インビクタス/負けざる者たち』
『プレシャス』
『スタートレック』
『カールじいさんの空飛ぶ家』
『マイレージ、マイライフ』

アカデミー賞の作品賞枠が10枠に増えるのと併せて、こちらの製作者組合賞も10枠に増えたわけです。その1年目のこの年は、製作者組合賞の8本がアカデミー賞作品賞候補へ。これにサプライズコンテンダーとなった『しあわせの隠れ場所』『シリアスマン』が加わったわけです。



<2010年>
『127時間』
『ブラックスワン』
『ザ・ファイター』
『インセプション』
『キッズ・オールライト』
『英国王のスピーチ』
『ソーシャル・ネットワーク』
『ザ・タウン』
『トイストーリー3』
『トゥルー・グリット』

製作者組合賞10枠のうち、9本がアカデミー賞作品賞候補入り。
この年は作品賞が10枠固定だったので、『ウィンターズ・ボーン』だけが製作者組合賞に入らずに候補入りを果たしたわけです。



<2011年>
『アーティスト』
『ブライズメイズ 史上最悪のウエディングプラン』
『ファミリー・ツリー』
『ドラゴン・タトゥーの女』
『ヘルプ 心がつなぐストーリー』
『ヒューゴの不思議な発明』
『スーパー・チューズデー 正義を売った日』
『ミッドナイト・イン・パリ』
『マネーボール』
『戦火の馬』

この年は近年で最も直結率が低い年といっても、10本中7本がアカデミー賞候補へ。
アカデミー賞ではこの7本に加え『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』『ツリー・オブ・ライフ』が候補入りしました。


<2012年>
『アルゴ』
『ハッシュパピー バスタブ島の少女』
『ジャンゴ 繋がれざる者』
『レ・ミゼラブル』
『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』
『リンカーン』
『ムーンライズ・キングダム』
『世界にひとつのプレイブック』
『007/スカイフォール』
『ゼロ・ダーク・サーティ』

昨年はアカデミー賞本戦には9本の作品賞候補が挙がりましたが、外国語映画『愛、アムール』以外はすべてこの製作者組合賞に候補入りした作品でした。



以上の4年間を振り返ってみると、以下のことがわかります。

製作者組合賞はアカデミー賞よりもブロックバスター映画に優しい

製作者組合賞→アカデミー賞に失敗した8作品を並べてみると、
『スタートレック』
『ドラゴン・タトゥーの女』
『ブライズメイズ』
『007/スカイフォール』
は本来なら賞レースに上がるようなタイプの作品ではないだけに、製作者組合賞は比較的ブロックバスターに優しい賞であることがみえる。

残りの4本は面白いことに、
『インビクタス』
『ザ・タウン』
『スーパー・チューズデー』
の3本は俳優を兼任する監督の作品であって、

『ムーンライズ・キングダム』は俳優たちから非常に愛されるウェス・アンダーソンの作品である。
つまり、アカデミー賞に比べて、俳優志向が強い賞なのではないだろかと、推測できる。


また一方で、作品賞で突然登場した作品たち
『しあわせの隠れ場所』
『シリアスマン』
『ウィンターズ・ボーン』
『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』
『ツリー・オブ・ライフ』
『愛、アムール』

こちらの傾向は掴みづらいのではあるが、
アカデミー賞で愛されるコーエン兄弟やスティーブン・ダルドリーが並ぶこと、海外の映画祭で高い評価を得ている作品、インディーズ映画がこちらに上がるのでは。『しあわせの隠れ場所』はどれにも該当しないが、近年では珍しい、アメリカらしいフィールグッドムービーであることを考えると、そういう枠も必要とされているのではないだろうか。



これらを踏まえて、今年の製作者組合賞候補10本を見てみましょう。


『それでも夜は明ける』
『アメリカン・ハッスル』
『ブルージャスミン』
『キャプテン・フィリップス』
『ダラス・バイヤーズクラブ』
『ゼロ・グラビティ』
『Her』
『ネブラスカ ふたりの心をつなぐ旅』
『ウォルト・ディズニーの約束』
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』


例年通り、この中から1〜3本がアカデミー賞に行けないという傾向に従うと、
『ブルージャスミン』
『ダラス・バイヤーズクラブ』
の2本が真っ先に外れる。

直接的に作品の評価に繋がっていない『ブルージャスミン』は完全に演技賞レースでの勝負となる可能性が高く、役者陣の評価が高いのでこの中に入ったと考えるのが賢明かと。同じく『ダラス・バイヤーズクラブ』もマコノヒーとレトの快進撃に拍車をかけての候補入り。役者志向が高い賞であることを考えると、他の前哨戦の流れから、この2本が浮いて見えるのである。


そうなると、8枠になるので、残りは最大で2本が滑り込んでくる。
製作者組合賞から漏れた作品の中で最有力はやはりコーエン兄弟の『Inside Llewyn Davis』であることは間違いない。
前哨戦の勢いと、近年のコーエン作品の愛され方からして、作品賞候補落ちは考えづらい。

気になるところはこの中にワインスタイン作品が入らないことである。
やはり『8月の家族たち』『あなたを抱きしめる日まで』『フルートベール駅で』『大統領の執事の涙』から1本は入ってくると構えておくほうが自然である。
滑り込む作品の傾向に合致するのは『あなたを抱きしめる日まで』か『フルートベール駅で』と見るが……。
下手したら今年はワインスタインが絡まないアカデミー賞作品賞レースになるのか……?


さて。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』はどうだろうか……。これが一番の爆弾である。


ちなみに、アメリカ製作者組合で最優秀賞を獲得した作品は、ほぼ問題なくアカデミー賞作品賞に輝いていることも忘れてはいけない。
あと2週間を切ったアカデミー賞ノミネート発表が非常に楽しみである。















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