【第86回オスカー受賞予想】第13回:作品賞

さて。最後の回になりました。作品賞です。

●作品賞

作品賞の枠が5枠から増えてから今年が5回目。何だかんだ言っても、作品賞は5枠でいいのではないだろうか、と思ってしまいます。

まずそれぞれの作品のノミネート実績を確認しましょう。

『ゼロ・グラビティ』監督、主演女優、撮影、編集、美術、視覚効果、録音、音響効果、作曲(最多10部門)

『アメリカン・ハッスル』監督、主演男優、主演女優、助演男優、助演女優、脚本、編集、美術、衣装デザイン(最多10部門)

『それでも夜は明ける』監督、主演男優、助演男優、助演女優、脚色、編集、美術、衣装デザイン(9部門)

『ダラス・バイヤーズクラブ』主演男優、助演男優、脚本、編集、メイキャップ&ヘアスタイリング(6部門)

『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』監督、主演男優、助演女優、脚本、撮影(6部門)

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』監督、主演男優、助演男優、脚色(5部門)

『キャプテン・フィリップス』助演男優、脚色、編集、録音、音響効果(6部門)

『her 世界でひとつの彼女』脚本、美術、作曲、歌曲(5部門)

『あなたを抱きしめる日まで』主演女優、脚色、作曲(4部門)


約5%の1位票が入ると10本までが作品賞に入るという近年のシステム。
仮に5枠だったとしても、『ゼロ・グラビティ』『アメリカン・ハッスル』『それでも夜は明ける』はノミネートされていたでしょう。
残りの2枠はおそらく『ネブラスカ』と『ダラス・バイヤーズクラブ』か『ウルフ・オブ・ウォールストリート』なのでは。


まず、注目すべき3強なのですが、以前こちらで書いたことをまとめて行こうと思うのですが、

最多候補作の2本『ゼロ・グラビティ』『アメリカン・ハッスル』

過去10年間で最多候補作の成績は、4勝6敗。二桁候補にあがっていても昨年の『リンカーン』や『ベンジャミン・バトン』『アビエイター』が敗戦しております。



『ゼロ・グラビティ』に関して

SF映画は過去7本(『時計じかけのオレンジ』『スターウォーズ』『ET』『アポロ13』『インセプション』『アバター』『第9地区』)が候補入りを果たすも受賞に届かず。
実写3D映画も『アバター』『ヒューゴの不思議な発明』『ライフ・オブ・パイ』と、いい所までは行くのだけれど、作品賞には一歩届かず

しかも脚本賞(脚色賞)の候補から外れた作品で作品賞を受賞したのは過去に4本。『タイタニック』や『サウンド・オブ・ミュージック』がそれに該当するので、受賞すれば歴史的な作品と認められることに。
もっとも、昨年は『アルゴ』が監督賞候補に挙がらなかった作品として史上3本目の作品賞に輝いただけに、こういうデータは当てにならないのかもしれない。



一方、『アメリカン・ハッスル』は、俳優組合賞のキャスト賞に輝いている。
この賞を獲った映画は18年間で9作品が作品賞に輝いているので、確率は半分。

また、主要6部門+脚本部門の候補に挙がった作品は過去に12本あるが、作品賞に輝いたのは僅かに2本だけ。
その2本『地上より永遠に』と『ミニヴァー夫人』に共通するのは、監督賞と撮影賞と編集賞の受賞。あとは演技部門も共通していますが、この大きな3部門は、今年は少なくともふたつは完全に『ゼロ・グラビティ』受賞ムード。編集賞も譲りかねない状況では、『アメリカン・ハッスル』が作品賞を獲ることは厳しいだろう。


また、『それでも夜は明ける』は、非常に保守的な題材で評価を積み重ねてきている。
一部では、これが作品賞を獲ったら「やっぱりアカデミー賞は保守的だ」というような意見が出ているが、それは真逆である。
実際に、人種差別題材の映画がアカデミー賞を獲ったことがあるだろうか。
『夜の大捜査線』『ドライビングMissデイジー』。黒人差別を扱った作品はこの2本だけである。ユダヤ人差別を描く作品には極めて弱い一方で、黒人差別の風潮はこういうところに残っているのだ。

『野のユリ』
『招かれざる客』(同じ年に『夜の大捜査線』があったが)
『カラーパープル』
『しあわせの隠れ場所』
『ヘルプ』

数ある黒人差別を描いた映画の中で、ノミネートに漕ぎ着けたものもわずかにこれだけ。受賞できる日は、決して近いものではない。


しかし、
最重要前哨戦(この表現を毎回使っている気がする)の製作者組合賞に輝いた『それでも夜は明ける』。だが、ライバル『ゼロ・グラビティ』と同時受賞という異例の事態になった。
過去24回の製作者組合賞で作品賞を獲りながら、オスカーを獲れなかった映画は7本。近6年は軒並み直結しているので、作品賞はSFか人種差別映画かのどちらかであることは間違いない。


3強に不安要素が目立つのであれば、他の作品が獲るのであろうか。いや、その可能性はほぼゼロに等しい。
重要な監督賞と編集賞を満たす作品が3強以外に無いこと。
しかもどちらかの候補に挙がっている作品でも、受賞の目がほとんどないこと。(せいぜい『キャプテン・フィリップス』だが、あれはグリーングラス映画だから例外)
それを考えると、3強で決まることは間違いない。


他部門のこれまでの予想を見てきていただいてわかる通り、『ゼロ・グラビティ』は技術系の部門をほぼ獲れる状態にある。
主演女優賞、美術賞以外は間違いなく獲れるであろう。
最多候補作は度々何かひとつぐらい落とすが、ここまで勢いづいて、今年のオスカーのムードは『ゼロ・グラビティ』一色に染まるだろう。

もしかすると、主演女優賞も獲ってしまって『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』以来の完全制覇もあり得るかもしれない。そのぐらいのパワーを持っていると思われる。

故に、第86回目のオスカーは、『ゼロ・グラビティ』と予想する。



◎『ゼロ・グラビティ』
『アメリカン・ハッスル』
『それでも夜は明ける』
『ダラス・バイヤーズクラブ』
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』
『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』
『キャプテン・フィリップス』
『her 世界でひとつの彼女』
『あなたを抱きしめる日まで」



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