【予想】第88回アカデミー賞全部門受賞予想

  作品賞
  『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
『ブリッジ・オブ・スパイ』
『ブルックリン』
『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』
『オデッセイ』
『レヴェナント 蘇えりし者』
『ルーム』
『スポットライト 世紀のスクープ』

GGを受賞した『レヴェナント』、俳優組合賞の『スポットライト』、製作者組合賞の『マネー・ショート』の三つ巴。
脚本賞候補から漏れている『レヴェナント』は一歩後退か。『サウンド・オブ・ミュージック』や『タイタニック』のような歴史的超大作とは呼び難いだけに、脚本部門を落としたのは大きい。
同様に監督賞、編集賞のいずれかを落としていてもダメで、そうなると『スポットライト』vs『マネー・ショート』となる。どちらも演技部門に候補入りをぎりぎり獲得しているので、優劣は難しいところ。強いてあげるなら、まだ新しいオープンロードフィルムがパラマウントに対抗できるほどのキャンペーンパワーを有しているか。おそらくそれはない。
となると、栄光は『マネー・ショート』へ。



  監督賞
  アレハンドロ・G・イニャリトゥ『レヴェナント 蘇えりし者』
アダム・マッケイ『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
ジョージ・ミラー『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』
レニー・エイブラハムソン『ルーム』
トーマス・マッカーシー『スポットライト 世紀のスクープ』

ここはイニャリトゥの独壇場になるのではないだろうか。史上3人目の連覇達成も充分ありうる。監督組合賞の受賞で、より可能性が高まっている。
作品賞受賞監督が、次回作で評価されることは思いの外多くないというジンクスを打ち破ったことが何よりも大きい。今年も監督賞オスカーは、アメリカ人には渡らない。



  主演男優賞
レオナルド・ディカプリオ『レヴェナント 蘇えりし者』
ブライアン・クランストン『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』
エディ・レッドメイン『リリーのすべて』
マット・デイモン『オデッセイ』
マイケル・ファスベンダー『スティーブ・ジョブズ』

レオ様悲願のオスカー受賞へ。今年は有力なコンテンダーがいないという消去法で、安泰ではないだろうか。
逆転するならクランストンかデイモンのどちらか。いや、ほとんどないでしょう。



  主演女優賞
  ブリー・ラーソン『ルーム』
ケイト・ブランシェット『キャロル』
シャーロット・ランプリング『さざなみ』
ジェニファー・ローレンス『Joy
シアーシャ・ローナン『ブルックリン』

最初はラーソンvsシアーシャの一騎打ちと言われていたが、すでにシアーシャが後退。インディ映画の女王が、ついにオスカーに輝くか。
シアーシャは恒例のアイルランドアカデミー賞があるので、逆転の受賞があるならシャーロット・ランプリング。
ところで、主演男優賞と主演女優賞は、キャリアを考慮した発表順になる傾向があります。つまり、主演男優賞が先に発表されたら、ここはシャーロット・ランプリングが獲るということ。




  助演男優賞
  シルヴェスター・スタローン『クリード チャンプを継ぐ男』
クリスチャン・ベール『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
マーク・ラファロ『スポットライト 世紀のスクープ』
マーク・ライランス『ブリッジ・オブ・スパイ』
トム・ハーディ『レヴェナント 蘇えりし者』

正直ここは誰が獲ってもおかしくない。ライランスがまだ可能性十分だが、今年のオスカーは変革の年!というのを示すなら、やはりスタローンに獲ってもらいたいと思うのが映画ファンの心。
作品賞三つ巴作品が作品賞以外で唯一直接対決する場所でもある。



  助演女優賞
  アリシア・ヴィキャンデル『リリーのすべて』
ケイト・ウィンスレット『スティーブ・ジョブズ』
ジェニファー・ジェイソン・リー『ヘイトフル・エイト』
ルーニー・マーラ『キャロル』
レイチェル・マクアダムス『スポットライト 世紀のスクープ』

本音を言えばルーニーに獲ってほしいが、ここは仕方ないだろう。今年はアリシアの輝く年。
逆転候補もいつの間にかウィンスレットと言われている。ディカプリオがオスカーを獲るためのお膳立て?それを考えると怖い。


  脚本賞
  『インサイド・ヘッド』
『ブリッジ・オブ・スパイ』
Ex Machina
『スポットライト 世紀のスクープ』
『ストレイト・アウタ・コンプトン』

近年時々大荒れを見せる脚本部門。今年はタランティーノがいないサプライズ。
『スポットライト』が有力候補だが、同作が作品賞を獲れないことを示す最初のステップになるのではないだろうか。アニメーション部門で輝く『インサイド・ヘッド』が逆転すると読む。



  脚色賞
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
『ブルックリン』
『キャロル』
『オデッセイ』
『ルーム』

かなり質の高い作品が集まったこの部門。『マネー・ショート』はここで獲らなければ作品賞が遠のいてしまう可能性。他の候補部門では受賞できないだけに、ここを落として『戦艦バウンティ号の叛乱』以来の作品賞だけをかっさらっていくということは、まずないと考えられるからだ。



  撮影賞
  『レヴェナント 蘇えりし者』
『キャロル』
『ヘイトフル・エイト』
『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』
『ボーダーライン』

エマニュエル・ルベツキの3連覇、ロジャー・ディーキンスの悲願、16㎜フィルム、70㎜フィルムのウルトラパナビジョン、現代のあらゆるカメラを駆使したアクション大作という、まさに撮影の頂上決戦。
軍配はルベツキの3連覇にあがるだろう。撮影監督組合賞の受賞で大きく弾みがついた。



  編集賞
  『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
『レヴェナント 蘇えりし者』
『スポットライト 世紀のスクープ』
『スターウォーズ/フォースの覚醒』

作品賞直結か、アクション映画の評価か。二分されるこの部門。作品賞三つ巴作品が受賞すれば、作品賞と直結する。『マッドマックス』はここを獲っても作品賞には結びつかないだろうが、アクション評価という点で、受賞する可能性が最も高い。現に、前哨戦はほぼ総取り。
逆転するなら『マネー・ショート』がここを勝って作品賞の受賞を固めに来る。



  美術賞
  『レヴェナント 蘇えりし者』
『ブリッジ・オブ・スパイ』
『リリーのすべて』
『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』
『オデッセイ』

組合賞を制した作品が有力ではあるが、コンテンポラリー部門の『オデッセイ』は一歩後退。ピリオド部門の『レヴェナント』のほうがファンタジー部門の『マッド・マックス』よりは分がある予感も。順当に考えたら、前哨戦で圧勝している『マッドマックス』。



  衣裳デザイン賞
  『シンデレラ』
『キャロル』
『リリーのすべて』
『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』
『レヴェナント 蘇えりし者』

比較的同じ人が受賞しやすいこの部門。作品賞候補作の受賞はここ10年で昨年の『グランド・ブダペスト・ホテル』のみ。
大御所サンディ・パウエルが『キャロル』と『シンデレラ』で候補入りしていることを考えれば、より受賞傾向に近い『シンデレラ』に軍配があがるのではないだろうか。
美術賞とともに、『マッドマックス』が受賞する可能性も十分にある。



  メイキャップ&ヘアスタイリング賞
  『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』
100歳の華麗なる冒険』
『レヴェナント 蘇えりし者』

組合賞で受賞している時点で、『マッドマックス』が独壇場。ここも含めて技術系部門総なめもありそうなので怖い……。他の二作は組合賞で上がらなかったのが大きなマイナスポイント。



  視覚効果賞
  『スターウォーズ/フォースの覚醒』
Ex Machina
『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』
『オデッセイ』
『レヴェナント 蘇えりし者』

近7年、パラマウント→フォックス→ワーナーが交互に繰り返し、昨年はパラマウントの『インターステラー』が受賞。となると今年はフォックスの番?『オデッセイ』と『レヴェナント』が受賞する可能性も無いとは言えないが、やはり『スターウォーズ』を評価するのはこの部門。前哨戦の組合賞を受賞したことが大きい。



  録音賞
  『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』
『ブリッジ・オブ・スパイ』
『オデッセイ』
『レヴェナント 蘇えりし者』
『スターウォーズ/フォースの覚醒』

音楽映画が強いこの部門。昨年は『セッション』が逆転勝利を収めましたが、今年のメンバーに音楽映画はおらず。かなりどの部門も同じような面々。アクション映画もなかなか強く、受賞の目があるのは『マッドマックス』『レヴェナント』『スターウォーズ』の3作。組合賞で『レヴェナント』が勝ったものの、それほど合致するというわけでもない。ここは『マッドマックス』に軍配か。



  音響効果賞
  『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』
『オデッセイ』
『レヴェナント 蘇えりし者』
『ボーダーライン』
『スターウォーズ/フォースの覚醒』

近年の受賞作はすべて作品賞候補作。となると、またいつもの3本が残ります。
ほぼ半々の形で録音賞と合致することがあるので、録音賞を『マッドマックス』にしている以上、一番安全な予想は『マッドマックス』でしょう。『レヴェナント』が獲る可能性も高い。



  作曲賞
  『スターウォーズ/フォースの覚醒』
『ブリッジ・オブ・スパイ』
『キャロル』
『ヘイトフル・エイト』
『ボーダーライン』

ここは無冠の帝王エンニオ・モリコーネと、王道ジョン・ウィリアムズの一騎打ち。前哨戦の感じではモリコーネが圧倒的優勢。直前の国際映画音楽批評家協会賞ではウィリアムズが戴冠。賞として一番盛り上がるのは……と考えると、やはりスターウォーズか?


  歌曲賞
  Til It Happens to You」『The Hunting Ground
Earned it」『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』
Manta Ray」『Racing Extinction
Simple Song #3」『グランドフィナーレ』
Writing’s on the Wall」『007/スペクター』

過去16年でアニメ映画10本。作品賞候補作が4本というこの部門。ただし今年は全部この部門のみの候補作となる実写映画。まさかのフィフティ・シェイズ……。話題性から考えると、『The Hunting Ground』が圧倒的。これまでの実績を考えると『スペクター』の線もあるが、昨年のレディー・ガガのパフォーマンスが伏線となってる可能性十分。



  長編アニメーション映画賞
  『インサイド・ヘッド』
Anomalisa
『父を探して』
『ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム』
『思い出のマーニー』

時々小サプライズがあるこの部門だけれども、今年はアニー賞を席巻した『インサイドヘッド』の独壇場。近年アニー賞の受賞作との合致と不合致が交互に来ており、今年は合致の番。さらに、同じピクサー配給の『アーロと少年』が候補漏れしたこともあって、ディズニー票が集中。今年はサプライズはない。



  外国語映画賞
  『サウルの息子』(ハンガリー)
Embrace of the Serpent』(コロンビア)
『裸足の季節』(フランス)
『ディーブ』(ヨルダン)
A War』(デンマーク)

ここも独壇場でしょう。他の作品が逆転できる見込みがほとんどない。本当なら作品賞に上がってもおかしくないぐらいの高評価の作品なのだから、万が一があると、、、いや、どれもあり得ない。



  長編ドキュメンタリー映画賞
  AMY エイミー』
『カルテル・ランド』
『ルック・オブ・サイレンス』
『ニーナ・シモン魂の歌』
『ウィンター・オン・ファイヤー:ウクライナ、自由への闘い』

この時点ですべての候補作に邦題が決まっているという珍しいケース。それはさておき、この部門も時々波乱が起こる。最近はもっぱら芸術系ドキュメンタリー作品が勢いを持っている。その点では前哨戦圧勝の『AMY エイミー』と『ニーナ・シモン魂の歌』の一騎打ち。ここは順当に『AMY エイミー』の勝利を。



  短編ドキュメンタリー映画賞
Last Day of Freedom
Body Team 12
Chau, beyond the lines
Claude Lanzmann: Spectres of the Shoah
A Girl in the River: The Price of Forgiveness

受賞経験者の『A Girl in the River』が有力か、もしくはそれ以外か。こちらも傾向はかなり掴みづらい。『Body Team12』はエボラ熱の遺体回収チームを描く。ベトナム戦争に関連した話ということで、『Chau, beyond the lines』と『Last day of Freedom』の2作品があり、『SHOAH』の制作にまつわるクロード・ランズマンについてのドキュメンタリーも候補入りし、かなり粒ぞろい。アニメーションを用いている作りの独創性から、『Last Day of Freedom』が一歩リードか。『Body team12』もあり得る。



  短編実写映画賞
Shok
Ave Maria
Day One
Everything Will be Okay
Stutterer

今年は非常に混戦。学生アカデミー賞からの『Day One』『Everything Will be Okay』も含め、宗教上の問題を描く『Ave Maria』など、興味深い作品が多数。受賞歴を加味し、かつこの部門で受賞しやすい子供が主人公の作品ということで、『Shok』を推す。



  短編アニメーション映画賞
  『明日の世界』
『ある熊の物語』
Prologue
Sanjay’s Super Team
『ウィ キャント リヴ ウィズアウト コスモス』


72年に同部門に輝くリチャード・ウィリアムズの『Prologue』と、2000年にノミネートされたドン・ハーツフェルトの『明日の世界』、そしてピクサーの新作『Sanjay’s Super Team』の三つ巴。チリ映画初の同部門候補の『ある熊の物語』と、ロシアの『ウィ キャント リヴ ウィズアウト コスモス』はノミネートこそが勝利。これまでの評価から考えると、ハーツフェルトが悲願のオスカーへ。

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